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無限英雄 第10話(その2)

第10話『一つの結末』(その2)







 虹色インフィニティはエレベータで最上階の統治の部屋に入った。
『お前が元締めか?』
 椅子に座っている統治に聞いた。
「・・・部下は全員やられたようだな」
 統治の言葉に、虹色インフィニティは下を見るふりをした。
 ビルの前でパイルマニア、メイクアップ、スパークリングが人間に戻って倒れていた。
 ビルに入ってここに来るまでにサチューカンとイージースカイを倒した。
 サチューカンはエレベーターの中で血まみれで気を失っている。
『死んではいないさ。社会復帰は難しいだろうがな』
「楽しいだろう? より強い力を行使するという事は?」
 統治の問いに、虹色インフィニティは少し間を置いて答えた。
『ああ、たまらないな』
「それでいい。私もおなじ意見でね」
 統治は立ち上がると、虹色インフィニティの前までゆっくりと歩いてきた。
「しかしまあ、真なる強者は一人でいい」
『同感だ』
 統治はにっと笑うと、体に力を込めた。
 体の筋肉が盛り上がり、二周りビルドアップした。
『肉体強化タイプか』
「いいや、これは薬品による肉体強化だ。
科学の力もバカにならんだろう?」
 統治の拳が、虹色インフィニティの顔面に繰り出された。
 虹色インフィニティは大きく飛ばされ、ビルの強化ガラスを割って外に飛ばされた。
 高層ビルの最上階から、落下をはじめる。
『ちっ』
 ビルの壁に指を立てるとブレーキにした。
「ぶおぉぉ!」
 統治が上からビルの壁面を走ってくると、追い討ちで虹色インフィニティを殴りつけた。
 今度は地面までまっさかさまに突き刺さると、クレーターを作った。
 その衝撃がビルが傾く。
『・・・ぐおっ、バディビルなんて比じゃねぇ・・・』
 虹色インフィニティはのそりと起き上がる。
「私はねぇ。元からこれだけの力を持っているんだよ」
 統治は着地すると虹色インフィニティに言い放つ。
『なるほど、確かにすげぇ』
「科学のほかに、オカルトも極めた、こんな風にな」
 統治は口から火玉を吐き出した。
『ぐおっ!』
 虹色インフィニティは 腕に力を込めてそれをなぎ払った。
 それた火玉がガレキを吹き飛ばして辺りを炎上させた。
「そんな私が何を望んだと思う?」
『・・・さあなぁ、永遠の命とか?』
「違うね。長寿のバイオニズムなどいくらでも方法がある」
 冗談ではないのだろう。
『じゃあ・・・』
「ご披露しようか。これが私の望んだ力だ」
 そういうと、統治の体がぶれはじめて、やがて二体に分かれた。
『・・・分身?』
「私はね。自分以外の人間の能力をアテにしたくないんだ。
私より優れていて、それでいて忠実な人間なんて、この世にはいない。
しかしいくら能力があろうと、1人では出来ないことがある、だから・・・」
 統治の体がまたぶれた。
 そして10人になり、20人になった。
「私がたくさんいればいい、そう望んだんだよ」
 20人の統治がいっせいに口を揃えて言った。
『そんな・・・』
「聞く分には簡単だが、相対すると怖かろう」
 統治が40人に増えた。
『ぐっ!』
 近くの一人に殴りかかったが、その拳は受け止められてしまった。
「私の脅威になる能力者がいるかもしれないと思ったのだが・・・そんな事もなかった、な」
 気がつくと虹色インフィニティを囲むように無数の統治が、空からも虹色インフィニティを見ていた。
『つまらん願望を持った自分を呪うのだな』
 当地の声が大合唱で響き渡り、同時に火玉を虹色インフィニティに向けて吐き出した。
『う、ああっ・・・!?』
 避けられるわけもなく、四方八方から同時に打ち出された火玉は中央でぶつかり、超爆発を起し、炎の柱が天にまで届き、雲を切り裂いた。

 突然の凄まじい轟音と火柱の出現に、街全体に凄まじい衝撃が走った。
 小銭で瞳と自分をガードした範子はゆっくりと覆っている小銭のバリアの一部を解いた。
 爆発がおこったのはかなり離れて場所では会ったが、辺りは一瞬で駆け抜けた熱風で死屍累々としていた。
 この付近の生き残りは絶望的だろう。
「な、何・・・これ・・・」
 瞳がその光景を見て呟いた。
 その瞬間に雨が降った。一瞬で蒸発したしたからだろう。
 ドロドロのアスファルトがじゅうじゅうと音を立てた。

「・・・ふふ《私》も100人ばかり消し飛んだか」
 統治は再び一人になると、底が見えないほど穴のあいた地面の穴を眺めた。
「この威力・・・ふふふ、世界をも一日で滅ぼすことができるな」
 当然ながら、ここまでに力を使った事は今までなかった。
 思った以上の自分の力に、統治は歓喜から震えた。
「・・・統治」
 声がした。この状態で生きていられる人間などいないはずだ。
 ただでさえここは爆発現場だ。普通の人間が存在するはずはない。
「パイルマニア・・・そうか、キサマは炎の超人だったな」
「ああ、吸収してむしろパワーアップしたよ」
 パイルマニアは統治の横に並ぶと、地面にあいた巨大な闇を見据えた。
「・・・俺が燃やすもん・・・なくなっちまったな」
 パイルマニアがつぶやく。
「街なんぞまだいくらでもある。これから好きなだけ燃やすがいい」
 統治はそう言うと、元の人間体に戻った。
「・・・わかってねぇよな」
「ん?」
「本当、分かってないよあんたは」
 パイルマニアは統治の両肩に自分の手を置いた。
「お、おい」
「何もかも吹き飛ばしやがって・・・くそやろう」
 ぼっ。統治の体が発火した。
「なっ!? ぎゃああああっ、きざ、キサマ・・・」
「やっぱ人間に戻る時にやるのが一番楽だな」
 パイルマニアが統治を抱きしめると、統治の体は灰になって潰れた。 
「バカやろう・・・全部灰にしちまいやがって」
 パイルマニアの目から涙が溢れたが、すぐに蒸発した。
「本当は、この街を愛してたんだもんな」
 声が聞こえた。
 見知らぬ青年が立っていた。
「・・・なんだお前は?」
「俺は奈月円(なつき まどか)とんでもないことになったなぁ」
 円は人事のように言う。
「もし・・・」
 ちらりとパイルマニアを見る。
「もしこの状況が少し前からリセットできるとしたら、お前は止められるだろうか?」
「何・・・?」
 円の言葉が理解できない。
「時間が少しだけ戻ったら、お前はこの結末を変える事が出来るか?
もしもの話だよ。どうする?」
「やるさ。俺はこんな結末の為に超人になったんじゃねぇ」
 円はその返答に笑みを作る。
「それじゃあ、頼むわ」
 円がそう言うと、世界が消滅した。

つづく。 
by ookami102 | 2008-08-06 19:46 | 小説 | Comments(0)