無限英雄 第5話(その2)
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学校の屋上。
瞳には言う事は言ったので、ザボる拠点を屋上に戻した。
図書室から借りてきて『戦場の格闘技』という本を見て、ちょっとした型を取っていた。
「なに、ダンス?」
瞳の声が後ろから聞こえた。
「…円奈、俺に関わるなって言っといたろ?」
「承知してないもん」
悪びれる様子もなく近づいてくると、地面に腰をおろした。
「お前とばっかり会話してると、友達少ないヤツみたいに思われるな」
本に目を通しながら京介が呟いた。
人並みに友人も多いのだが。
「いいじゃん」
「よくねえよ」
京介のツッコミに瞳はニコニコとしている。
「なんか、さ、手伝えないのかな私」
「あ?」
瞳の言葉に、本から目を離す京介。
「ヒーローのお手伝い。なんか出来ない?」
京介は頭を掻いた。
「何もしてくれない事が一番助かる」
京介はそう言うと、瞳から視線をそらして、また本に目をやった。
瞳は頬を膨らましてぶーたれた。
逃げ延びたパイルマニアは、モノラルのアジトに来ていた。
「いやあ、おかげで助かりましたわ、火男はん。お礼のほうは後で用意しますさかい、くつろいでんか」
高そうなチェアに腰をかけ、ハマキを吹かしている。
パイルマニアは正体である蛭子火男に戻っていた。パイルマニアのままだと部屋に火がついてしまうからだ。
「こ、これから、ど、どうするんだい?」
蛭子火男に戻ると、途端に弱気になる。
「ほうですなぁ。あの通り、2人がかりでも手におえへんみたいやしな・・・」
モノラルはハマキの煙を吹かした。
「も、もっと集めよう…大勢で集中してあいつを…」
火男がそう言った瞬間に、急に部屋の照明が切れた。
『その話、おもしろいな』
声が響いた。
火男とモノラルは辺りを見回した。
すると、近くのコンセントから電気が放電し、人の形をとった。
『…私の名はスパークリング、ある方の密命であのヒーローを監視していたのだ』
スパークリングはそう説明すると、コンセントから完全に人型になり、地面に足をついた。
消えていた照明が復活した。
「…お、同じタイプの超人…」
パイルマニアも炎と同化することが出来る。
『そうだな、私と君は近しい…我々は君や私のような人間をネクスターと呼んでいる』
「我々?」
『そう、私は組織に属している。あるお方が組織され、今はネクスターを私含めて6人属している』
モノラルの疑問の言葉にスパークリングは答えた。
「6人もあんな特殊能力者がいるのか…」
モノラルはそういったものの、すでに4人の超人《ネクスター》と出会っている事に気がついた。
『ネクスターは三週間ほど前に蒼い雪を浴びた人間が覚醒したものだ。
その時に望んだ一番強い願望を強化された、それが能力として反映される』
火男は思い出した。放火の為に外に出た時に見た、不自然なあの蒼い雪を。
『例えば私などは、貧乏で電気が止められてしまってね。知ってればもっといいものを望みたかったが、ふふ』
スパークリングは自虐的にクスリと笑う。
「で、あんたはワシらに手を貸してくれるとでもいうんか?」
話が逸れかかったので、モノラルが戻した。
『ああすまないね、我々も少し、あのヒーローは目障りでネ。
まったく、欲望の力を正義に生かすなど無粋でならん』
と、自分でまた話が脱線しそうだと気がつくと、ひとつ小さく咳払いをした。
『あの方、は私ともう1人ネクスターを派遣してもいいとおっしゃっている。
どうかな。協力してくれると助かるな、パイルマニアくん』
火男は自分だけ正体が見られている事に軽く不快感を感じた。
同質のネクスターという事で少し不快感があるのかもしれない。
手に入れた当時は、自分だけが強くなり、力を行使できると考えていた。
しかしインフィニティをはじめとして、どんどんと能力者が現われた。
「…ああ、いいよ」
だが少なくとも、自分の邪魔をして屈辱を与えたインフィニティだけは倒さなければならないと感じていた。
スパークリングはその返事に満足した表情を見せると、コンセントのある位置まで向かった。
『では、後ほどまた連絡しますので』
「今度は、玄関から来て欲しいもんですな」
モノラルの皮肉に苦笑すると、雷電化してコンセントの中に入っていった。
「…胡散臭いヤツや」
モノラルは自分の外見を差し置いて、そう呟いた。
が、どこでスパークリングが聞いているか分からないと思い立ち、口に手を抑えた。
つづく。