無限英雄2 第7話(その2)
第7話『追う者、追われる者』(その2)
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無我はアリ怪人アントルの群れに囲まれていた。
その場その場を逃げ切る事は可能だが、ネクスター反応を追われて先回りされる。
液状化の能力自体は逃走に便利だが、スピードはあまりない。
今日は朝から追い掛け回されて無我は疲れ果てていた。
「うう…なんだこの光景は」
時代錯誤のサムライもどきに追い掛け回されたと思ったら今度は異形の怪人だ。
それだけアークスにとって無我の能力はほしいものであった。
「日ごろの行いが悪いんじゃないか?」
いつの間にかいた央真はそういうと無我の前に出た。
「あんたは?」
「正義の味方さ」
バッ!
央真がすばやく構えを取ると革ジャンが擦れて音が鳴る。
ジャキッ!
何故か腕を動かすと効果音が鳴る。
ジャキッ、ジャキン!
「ビーストチェンジャー!」
ビーストチェンジャーが召喚される。
ググググ。
拳を作ると指ぬきグローブから音がする。
「はあっ!」
キュルルル!
両手を大きく開いてジャンプすると何か音がする。
気合の入ったヒーローは一動作ごとに効果音が入る。常識である。
そして空中で光に包まれると着地する頃にはライオネット・シナバーに変化していた。
「なんだこれもうなんだこれ」
無我はさらに混乱を加速させる。
『いいから、怪我しないようにしていろ』
朱色のマスクヒーローに言われて、無我は近くの物陰に避難する。
『ライオネットブラスター!ガンモード!』
手持ち銃を周りに向けて3連射。アントル3体にビームが直撃して火花が散る。
『ソードモード!』
シナバーは銃を組み替えると、ショートソードサイズに変形させた。
飛び上がると、重力に任せて切っ先が地面につくまでアントルに振り下ろす。
アントルが爆発してシナバーは上体を起こす。
(…妙だな)
アントルの群れを見回しながらシナバーはアントルしかいない事に違和感を感じる。
(メイン怪人もテグスもいない)
赤色のアントル。チーフアントルはいるようだが。
考えつつ辺りに警戒してると、近くにいたアントルの顔に何かが直撃して爆散した。
ピシュ。
続けて飛んできたものが違うアントルの肩に当たり、そのアントルは体勢を大きく崩す。
間髪いれずにその頭を撃ちぬかれで爆発した。
『…任意か?』
『遅くなりました』
数百メートル離れたビルの屋上で京介はライフルを構えていた。
サイコが作ってくれた遠距離用補正のメットで照準は正確だ。
威力も申し分ない。
スコープの向こうでアントルがまた一匹爆発した。
『…すげえ威力』
京介は呟く。
『獣王逆鱗!』
援護を得たシナバーは逆鱗モードになった。
両手両足肩に刃が展開する、猫科的には逆立つという感じか。
攻撃特化した形態である。
アントルの群れに突っ込んでいくとその逆鱗で切り刻む。
「す、すげえ…」
戦闘光景を見ていた無我は声をあげる。
次の瞬間、後ろからアントルが無我の後ろ首を掴んだ。
「ぐあっ!?」
驚きで声をあげた無我にシナバーは気がつく。
『任意!』
シナバーの声で察した京介は銃先をそちらに向ける。
しかし無我が盾になっていて撃てない。
『央真さん!』
『いいから撃て!』
シナバーはわざと無我に聞こえるように大きな声で言った。
京介は無我の頭に目掛けてトリガーを引いた。
パシュン。
無我の頭を貫通して、その後ろにいたアントルに直撃した。
弾道が通り過ぎゲル状態が広がったままの頭で無我は息を吐いた。
「無茶しやがる」
そして顔を再び形成した。
液状化能力である。
その後はシナバーが残ったアントルを蹴散らし、終了した。
『お疲れ様、だが悪い知らせがある』
事後報告に通信を繋いだときのサイコの台詞がコレだ。
「こちらは陽動で、別の能力者がやられたってところか?」
『ああ…気付いていたか』
「数はいたが、雑魚ばかりだったからな」
央真は虚空を見つめると厳しい目をした。
「しかしこれでいくつかわかった事があるな」
『それは?』
「帰ってから話そう」
央真は通信を切った。
つづく。